情報提供は二四、八一四件あり、十年前と比較すると約二・二倍に増加しており、航行援助のためのセンターの有効性が認められてきたものと思われます。
それぞれの情報提供の内訳といたしましては、個別情報が約六パーセントで一、四五三件、特別情報が約五八パーセントで一四、四八二件、航路情報が約三六パーセントで八、八七九件となっており、十年前と比較すると個別情報が約一・三倍、特別情報が約二・九倍、航路情報が約一・二倍とそれぞれ増加しております。
これらの情報提供は、国際VHF16CHでまず船舶を呼び出したのち、CH14またはCH22に切り替えて行っておりますが、船名が分からない場合には16CHで船名不詳船として、直接注意喚起の情報提供を行うことがあります。
この船名不詳船に対する情報提供は、平成七年では六、二四五件あり、十年前に比較して約二〇・一倍に増加しており、その内容としては第二海堡乗り揚げ防止が約一九許、第三海堡乗り揚げ防止が約二一計、航路横断にかかわる注意喚起が約一一パーセント、浦賀水道航路出入口付近の衝突防止が約一〇パーセントなどとなっております。
船舶の安全航行を援助する情報提供の件数が増加していることは、東京湾における海上交通環境が以前にも増して厳しくなっていることの裏付けではないかと考えられます。
船名不詳船に対する情報提供によりまして、乗り揚げ事故を未然に防止した事例がありますので紹介します。

事故防止の事例〈第三海堡への乗り場げ防止〉
平成六年十一月一日午後六時ごろ、川崎港を出港したセントビンセント国籍の貨物船T号(九、六六二総トン、長さ一四六メートル、乗組員中国人・インドネシア人)が浦賀水道航路向け速力約一四・五ノットで南下したときのことです。
当時は南航ラッシュの時間帯で船舶交通が非常に輻輳している状況にあり、また風速一〇炉の北東の風が連吹し、潮流もちようど下げ潮時とあって、浦賀水道航路に入坑し、南航している船舶が集団となって航路西側に圧流され、第三海堡方向に指向しながら航行しているという最も悪い状況下にありました。
通常の南航ラッシュ時においても東京湾内の各港を出港した船舶が一隻ずつ並んで来れば問題はありませんが、これらの船舶が集団となって浦賀水道航路北口に殺到し、多いときには二十隻近い船舶が集団となります。
このような時が管制官が最も緊張してレーダー監視を行っているときであり、管制官は南航船に対して第三海堡への乗り揚げ防止の注意喚起を連続して行っていたところ、T号は午後七時三分ごろ、浦賀水道航路南航航路に入航したのち、直ぐに圧流されて航路外に出て、そのままの針路、速力で第三海堡方向に指向しはじめ、レーダー監視に当たっていた管制官がT号に対しても第三海堡への乗り揚げ防止の注意喚起を連続して行いました。
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